糖尿病患者は、非患者と比較して貧血を引き起こしやすいとのデータも
糖尿病患者は、糖尿病に罹患していない人と比較して、貧血を併発しやすいという報告がある。貧血と診断されていなくても、ヘモグロビンの値の軽度の低下を生じやすい事は、医療現場では良く知られている。貧血の背景には、糖尿病性腎症の発症により、腎性貧血状態となる事が分かっている。腎臓では赤血球の生産を促すホルモンである、エリスロポエチンが生成され、分泌されている。腎性貧血による腎機能低下により、腎臓でのエリスロポエチンの分泌が停止するので、造血能力も停止する。これが、糖尿病での貧血の主因だ。
糖尿病患者の貧血有病率は、慢性の腎臓疾患を発症している患者より高いという報告もある。糖尿病患者は、著しい腎機能低下が見られなくとも、腎性貧血を併発する事で、貧血に陥るのだ。貧血は血中のヘモグロビンが減少する事であり、糖尿病患者のヘモグロビンは、腎性貧血の併発により減少している可能性がある。従って、腎性貧血を併発していない糖尿病患者と血糖値は同値でも、腎性貧血を併発している糖尿病患者のヘモグロビンA1cの値は低値となる。
腎性貧血への対処方法としては、とにかく血糖値を下げ、エリスロポエチン投薬(経口、注射)療法などにより、赤血球の生成を促すように処置する事が肝心だ。赤血球造血刺激因子製剤を投与する治療も行われる。鉄剤や葉酸といった造血剤の投与も行う。食事療法では赤血球生産に不可欠なタンパク質、神経細胞内の核質やたんぱく質を合成・修復するために、動物性食品、特に貝類に多く含有されるビタミンB12の摂取、ほうれん草・ひじきに多量に含まれる鉄分などを多めに摂る事も重要だ。