妊娠中に罹患する妊婦の糖尿病は、一時的であれ食事療法等が必要
妊娠すると糖尿病を併発する事は、医療現場では良く知られた事だ。妊娠時に発症する糖尿病は、通常の糖尿病とは別の疾病だ。妊娠時には胎盤から、血糖値の上昇を促すホルモンが多く分泌され、妊娠中は一種の糖代謝異常の状態に、恒常的に母体は置かれるようになる。特に、妊娠中期以後には、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)となり、血糖値が上昇しやすくなる。これが、妊娠時の糖尿病であり、インスリンの分泌異常や、分泌量低下による、通常の糖尿病とは異なる状態だ。
妊娠中に血糖値を測り、値が空腹時血糖値で126mg/dℓ以上、ヘモグロビンA1cの値が6.5%以上、確実な糖尿病網膜症がみられる、.随時血糖値が200mg/dℓ以上のいずれかに該当する場合、「妊娠糖尿病」と診断される。通常の糖尿病とは異なる疾病とは言え、食事療法を中心とする治療を行う必要があるとされている。また、妊娠後、血糖値を測り、値が高い事が初めて分かる事も、まれにではあるが、事例として報告されている。
母体は正常の場合、妊娠によりインスリン抵抗性となる時期には、膵臓からインスリンが多く分泌され、血糖値の上昇を防ぐよう、自動的に血糖値を調節する機能を有する。しかし、必要なインスリンを分泌する事が出来ない体質の母体は、必然的に血糖値が上昇する。原因としては、2型糖尿病同様、糖尿病に罹患している家族・親族がいる、母体が肥満気味である、流産・早産歴がある。または、妊娠時の年齢が30代後半以降であり、比較的高齢妊娠であるなどの場合には、インスリン抵抗性となり、血糖値が上昇しやすくなるとされている。
インスリン抵抗性のない妊娠初期に、血糖値が高い事が判明した場合などは、妊娠前から血糖値が高めだった、つまりもともと母体が糖尿病に罹患しているか、「境界型」である可能性が高いと考えられる。この状態を「糖尿病合併妊娠」と言う。この場合、妊娠中毒症、尿路感染症、羊水過多症などを併発する場合もあり、胎児への悪影響も懸念されるので、やはり、食事療法を中心とする治療を行う必要性が生じて来る。1つの目安として、過去2~3週間の血糖値状態を示すグルコアルブミンの値が、15.8%以下であるように、血糖値コントロールを行う必要がある。